最高裁判所第三小法廷 昭和25年(れ)1620号 判決 1951年4月24日
本籍
宮城県加美郡賀美石村小泉字町屋敷五番地
住居
同県玉造郡東大崎村伏見上代 齋木留治方
農業
堀越良雄
大正一四年三月三日生
右の者に対する傷害致死被告事件について昭和二五年六月八日仙台高等裁判所の言渡した判決に対し、被告人から上告の申立があつたので当裁判所は刑訴施行法第二条に則り次のとおり判決する。
主文
本件上告を棄却する。
理由
弁護人河和金作上告趣意は末尾に添附した別紙記載のとおりである。
第一点について。
しかし被告人の判示殴打行為は原判決挙示の各証拠に照らし被害者を死に至らしめるに足る強度のものであつて、所論のような軽微なものとは認めがたい。そして被害者の特異体質が死亡の一原因を為したとしても被告人の行為は被害者の特異体質と相まつて被害者死亡の原因を為したものと認めるを相当とする、従つて被告人の判示行為に対し傷害致死の責を負わしむることは当然である。従つて論旨は採用できない。
第二点について。
所論の如き旧刑訴法上の手続違反があつたとしても、それは原審の訴訟手続に関するものではないばかりでなく、自首減軽を為すべきか否かは原審が自由に決し得べきことであるから、真実被告人が自首したものであり且つ原審において自首減軽を相当と認めたならば所論調書の有無に拘わらず、自首の事実を認定して減軽することができるのである従つて所論調書を作成しないからとて判決に影響すべき法令違背があるとはいえない、論旨は理由がない。
第三点について。
所論は結局原審の量刑不当を主張することに帰する。刑の量定は原審の自由裁量に委ねられているところであり、且つ原審において被告人に対し執行猶予を言渡さないことが実験則に違反するとは認められないから論旨は理由がない。
よつて旧刑訴四四六条により主文の通り判決する。
以上は裁判官全員一致の意見である。
検察官 十藏寺宗雄関与
(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上登 裁判官 島保 裁判官 河村又介)